singular points…特異点における日常の風景

 

Thursday, July 20, 2006

「雷轟rolling thunder PAX JAPONICA」

『戦争は公平ではありえない』…「最大多数の幸福を追求する民主主義こそ、覇権の争奪戦およびその発現形態たる侵略戦争の元凶に他ならない…このアイロニーは繰り返し強調されねばならないし、強調されすぎることもない。そして過去・現在は勿論、予測し得る将来においても、この種の認識から最も遠い存在こそ、我が日本国に他ならない。虚妄の戦後民主主義どころの騒ぎではない(中略)要するに世にもまれなるラッキイな国家ニッポンの幸運は近代百年にして破綻し、空念仏を唱えて世界の埒外に観念的逃避を繰り返す現在に至った…そういうことである」

「日本の覇権による平和(パックスヤポニカ)」…今作品の『雷轟rolling thunder』よりスタートした「奇才」押井 守による連作軍事小説(ミリタリー・ファンタジー)シリーズ『PAX JAPONICA』

歴史のif…アメリカ南北戦争終盤、南軍の知将リー(将軍)のワシントン突入による軍事的勝利がもたらした「二つのアメリカの誕生」。
英仏介入により北部23州からなる「アメリカ合衆国」と南部13州の「アメリカ連合」の成立は、分断国家となったアメリカ2ヶ国が双方とも長い国境線を挟んで対峙せざるを得ない「国内における軍事的疲弊」により、太平洋に進出する機会を逃すことになった。
そして、「幸運」にも太平洋の覇権国家となった日本。


今作は、南北戦争終盤を描く「アンティータム1862」と、日本がベトナム戦争に介入した航空戦を描く「ヤマトステーション1966」なる2つの中短編と解説篇により構成されています。(本篇が162Pに対し、解説篇が105P!とは恐れ入りました^_^;)
内容はさすがに「軍事オタク」である押井さんらしくマニアックさが良いのですが、ある程度の軍事的知識と歴史認識からなる「予備知識(というかですけど)」がないと正直厳しいかも(^_^;)
これから先、19世紀中盤から現代までの「150年間に渡る歴史のif」を押井さんがどのように描くのか、楽しみですねぇ♪(希望としては、せめて年0.65冊ペースで刊行して頂きたいなぁ)

押井さんはこの作品を通して、現代日本が孕む脆弱性(及び危険性)を警告しているようにも思います。
「負けるべき戦争を負けるべくして負け、責任を放棄し、思考を停止してしまった日本」…そんな国が「正義」など語れるはずもなく、懲罰が下されてしかるべきだ、と。
少々過激な思想のようにも思いますが、平和ボケした日本を憂いた「P2」のプロットを更に発展(進化?)させた小説バージョンであると考えれば(押井ファンとしては)理解・納得はできます。

それにしても、このシリーズがあの六本木ヒルズ(当時は「六本木六丁目再開発プロジェクト」と呼ばれていた。僕は巨大な高層ビルがそんなに「良いもの」とは思っておりませんが…)の開発主体:森ビルの広報活動の一環として始まったとは。(結局、元ネタの映像化は頓挫)
因みに、当初の目的であった映像作品の制作は、2003年の六本木ヒルズOPEN時に上映された「TOKYO SCANNER(監督:松 宏彰)」「東京静脈(監督:野田 真外)」となり、いずれも押井さんが監修で参加されています。

2 Comments:

  • こんちは。

    これ本屋さんでチラッと見て
    「私には無理だ・・・」と
    悟りました^^;。

    「負けるべき戦争を負けるべくして負け、責任を放棄し、思考を停止してしまった日本」…そんな国が「正義」など語れるはずもなく、懲罰が下されてしかるべきだ、と。

    のくだりだけ
    しっかり立ち読み(ばきっ)^^;。
    過激ではあるが、
    SACさん同様理解、納得できます。

    そのDVD、ヒルズの売店で上映されていたの観ました。この本にはそのいきさつが書かれていて興味深かったです。
    私の目にはヒルズは醜悪な建物群以外の何者でもないです(等価交換でお住まいの地権者さんたちごめんなさい)。
    内部の見通しの悪い建物に、気持ちの悪いキャラクター。今の日本の象徴です。

    By Anonymous shamon, at 7/21/2006 06:42:00 pm  

  • shamonさん、こんばんは♪

    僕も読了するまでに結構時間掛かり、速攻レヴーできませんでした(^^ゞ
    当たり前かもしんないですが、なかなか難しい「押井本」でした。

    By Blogger SAC, at 7/21/2006 11:12:00 pm  

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